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リアルコム

TOPが語る

  

新興市場上場企業のTOPが、上場の経緯や成長戦略を語る

 

2007/12/24

今回は、企業向けのソフトウェアとコンサルティングを提供するリアルコムの谷本 肇社長。

大久保:起業の経緯は
谷本:米国・シリコンバレーに、コンサルタントとして渡った経験がきっかけです。当時はまだインターネットが普及し始めたばかりでしたが、現地ではまだメディアに載らない生きた情報が飛び交い、ベンチャー企業が産声を上げる姿を目の当たりにしてきました。今後さらにITは革新を続けていくでしょうし、場所を問わずビジネスが加速するようなインフラが求められるのではと考え、起業を決意しました。
大久保:日本の商習慣では、1時間会議があれば50分は自己紹介で終わってしまう。中小・ベンチャー企業にとっては、悠長に構えられては間に合いません。
谷本:お互いに会う機会が限られていても、その間常に情報を共有していれば会えた時の商談も早い。
大久保:具体的には、どのような機能が必要ですか
谷本:たとえば、ユーザー分析に基づいて商品やサービスを推薦する「アマゾン」や「楽天」のようなリコメンデーション機能、あるいは知識を組織全体で持ち寄って編集する「ウィキペディア」のような集合知を共有する機能、そして人と人とのつながりを促進するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。これらの機能を用いて情報を常に共有できれば、事業の規模に関わらずビジネスのスピードが加速します。
大久保:ITがウェブ1.0からウェブ2.0へと進化するように、企業内の情報システムもエンタープライズ1.0からエンタープライズ2.0へと進化している
谷本:企業の情報は、トップだけがすべて把握しているわけではない。現場の第一線で働く、営業マンから活きた情報が入ることもあります。ボトムアップで集まる「集合知」は、これからは全社リアルタイムで共有するべきです。

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大久保:主力製品は
谷本:ブログやSNSとナレッジマネジメント・コンテンツマネジメントを融合させたソフトウェア「REALCOM KnowledgeMarket」、IBM社のグループウェア「Notes」を活性化させるソフトウェア「HAKONE for Notes」などです。これらの製品群を組み合わせる、あるいはカスタマイズするといった提案を行なうことにより、お客様企業の業務を円滑にするためのコンサルティングも手がけています。現在、ライセンス販売やソフトウェア開発、あるいは製品のカスタマイズなどで売上の70%以上を占めていますが、近年はコンサルティングに注力しています。
大久保:ECM(全社情報共有基盤)市場規模の展望は
谷本:現在日本国内では、ライセンス販売やソフトウェア開発に限定すれば約1000億円。これを含めたサービス提供まで広げると3000億円規模といわれ、年10〜15%拡大すると推測されます。市場全体において、さらに、各製品が特化するジャンルは「文書管理」「検索」「グループウェア」と細かく分類されますが、市場拡大に伴いサービス内容もボーダレスとなり、成長企業が群雄割拠する状況になると思われます。
大久保:競合はいますか
谷本:国内では富士通、日本IBMといった大手企業の一部が始めましたが、類似企業はありません。
大久保:ソフトウェア業界は、マイクロソフト、IBM、SAP、オラクルと巨大企業が台頭している
谷本:今おっしゃった4社の利益が、市場全体の約70%を占めるとさえいわれています。そのため、成長著しいベンチャー企業が4社の傘下に収斂され、超寡占化状態となる恐れもあります。
大久保:買収回避策は
谷本:ナンバーワンではなく、オンリーワンを目指すことです。自社がやらなくてもよいことは他社に一存し、自社だけが手がけている分野を深掘りする。小型モーターで世界シェア5割以上を占めるマブチモーターや、「亀山モデル」に代表される液晶技術で携帯電話やテレビの生産台数を伸ばしたシャープのように、独自のサービスを持ちたいですね。自社のコア・コンピタンスを相手に認めさせれば、対等な関係で提携できます。
大久保:大企業の資本力は、不安になりませんか
谷本:思惑はどうあれ、提携を求めてくるということは当社が必要とされているから。当社もまだまだ成長途上ですから悩みは尽きませんが、やはりベンチャー企業である以上、社会に存在意義があるべきです。業績はもちろんですが、今から1兆円企業を目指すのは無理がある。むしろ「リアルコムがなくなったら、このサービスはなくなる」くらいの希少価値を持つよう、ビジネスモデルを確立したいと考えます。

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大久保:経営課題は
谷本:昨年9月に上場を果たし、組織として転換期に差し掛かりました。創業以来、私は営業隊長として社員を引っ張ってきたが、これからはそういうわけにいかない。
大久保:現場力を鍛えつつ、経営方針は社長が把握するという組織の確立が必要ですね
谷本:執行役員を含め、管理職も確保できた。私は社長として、組織や経営基盤の構築に専念します。
大久保:将来像は
谷本:これまでは「日本発世界初」のサービスを目指してきましたが、今後は組織もグローバル化を目指したい。世界に通用するサービスを提供できるよう、既成概念に捉われない企業でありたいですね。

※※※
(対談を終えて)
独自の技術により、ナレッジやコンテンツの共有化を実現したリアルコムは、企業のセクショナリズムやコミュニケーションの壁を軽々と越えていきました。それも、「技術中心」でなく、あくまで使う「人中心」のサービス。市場再編が激しいソフトウェア市場で活路を見出し、上場を果たした成功の秘訣(ひけつ)は、ここにあったのです。
(大久保)

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聞き手:大久保 秀夫《おおくぼ・ひでお》
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1954年生まれ。国学院大卒。アパレル関連メーカーを経て、80年新日本工販(現フォーバル)を設立、社長に就任。利用者にとって最も安い通信事業者を自動的に選択するアダプター「NCC BOX」をソフトバンクと共同で開発。電電公社(現NTT)が独占していたビジネスフォン市場に風穴を空ける。88年社団法人ニュービジネス協議会主催による第1回アントレプレナー大賞受賞。05年より現職。著書『武士道に学ぶビジネスマン48の心得』(東急エージェンシー)、『やり抜けば仕事は必ず面白くなる!』(かんき出版)。東京都出身。
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(フジサンケイビジネスアイ 2008年2月25日掲載)
(ベンチャーファクトリーニュース 2008年5・6月号掲載)

⇒この記事の続きや会社概要を読みたい場合は、こちらから。
谷本 肇リアルコム社長《たにもと・ただし》
1964年生まれ。慶應義塾大学大学院経営管理研究科MBA。日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンを経て94年に渡米。2000年リアルコム創業、代表取締役に就任。05年アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2005ファイナリスト選出。現在に至る。大阪府出身。
リアルコム
(マザーズ3856)
▽住所=東京都台東区柳橋1-4-4 ツイントラスビル6F
▽電話番号=03-5835-3180
▽設立=2000年4月17日
▽事業内容=企業向けパッケージソフトウェアの開発・導入事業、ソリューション及びコンサルティングサービスの提供など
▽資本金=7億6141万円 (2008年1月末現在)
▽業績=売上高13億3746万円、経常利益1億9552万円(2007年6月期、連結)
企業の情報システムを統合管理するECM(全社情報共有基盤)構築のためのソフト開発・販売が主力。同社ソフトウェア導入企業は、NEC(日本電気)や大塚製薬、ソニー、丸紅、三菱東京UFJ銀行など176社55万ユーザーに上る。昨年2月米国・シリコンバレーに子会社を設立。




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