IT(情報技術)から、ICT(情報通信技術)へと技術革新が進むにつれ、企業から個人情報の漏洩が相次いで発生しています。事態の悪化を防ぐためには、2008年4月から施行されるJ−SOX法への対応もさることながら、社内システムの充実は不可欠です。ブロードバンド環境が一般的に普及し、またネットビジネスを核とする企業が多数上場を果たしている昨今では、ただ質の高い製品を開発し提供するだけでなく、その後の監視体制にも万全を期す必要があります。こうした需要を背景に、ネットワークセキュリティを業界他社に先駆けて手がけてきたラックと、金融業界や人材派遣業界を中心にシステム開発に携わってきたエー・アンド・アイ システムとが、今年10月に経営統合。持ち株会社として、当社ラックホールディングスを設立しました。
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経営統合を行なった戦略上の理由は、付加価値経営の推進です。両社のノウハウを統合することで、セキュリティに特化したシステムコンサルタントを育成し、社員一人ひとりが生み出す付加価値を向上させたいと考えております。既に業務提携を開始した2004年から、人材交流による育成を積極的に進めておりましたが、統合を機に加速させます。今後2年半で、175名のSEをセキュリティコンサルタントとして育成し、戦力とする予定です。
ネットワークセキュリティ市場は、年々拡大。2005年に約3300億円だった国内市場は、5年後には倍増すると見込まれています。ラックは、01年に開催された九州・沖縄サミットでサーバーを監視するセンターの設立・運用を担当したことを機に認知度が高まりましたが、いまではその導入実績は省庁にも及びます。今年11月に当社はKDDIと資本提携を締結しましたが、今後同社とは一体となって、新たなセキュリティソリューションの開発を意欲的に行なっていきます。
さらに、エー・アンド・アイ システムの主要取引先である、銀行や生保、人材サービス会社などをはじめとした大手企業にとっても、社内システムのセキュリティ強化は差し迫った問題です。業界他社に先駆けて研究・開発を続けてきた当社グループの技術力に対する需要は、今後さらに増えるでしょう。
また、エー・アンド・アイ システムはオフショアを活用したシステム運用・保守を国内や海外でプログラムを可視化して同期を取りながらデータベース化するための開発保守ツール「イージーソース」の日本と主要アジア地域における独占販売権を取得、合わせて台湾ウィツ社とパートナー契約を締結しました。今後、アジア各国でオフショア開発を実施する日本企業や外資系企業に対し、現地での技術支援やコールセンターサポートなどを行います。
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今後の計画として、2011年3月期には売上高305億円、経常利益39億5000万円、うちセキュリティソリューションサービス事業は101億円を見込んでおります。計画を達成させるためには、M&Aによる規模の拡大も意欲的に行なっていきたいと考えています。
当社では、こうした事業計画を、すべて「中期経営計画」と題した小冊子にまとめ、全社員に配布しています。イントラネットでの情報告知はもちろん、社内ブログも随時更新しています。社員全員が情報を共有することで、企業として目指す方向を一つにするためです。社内の理解を得られない経営施策が、お客様の理解を得られるはずがありませんから。(談)
(フジサンケイビジネスアイ 2007年12月24日掲載)
(ベンチャーファクトリーニュース 2008年3・4月号掲載)
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ラックホールディングス
TOPが語る
新興市場上場企業のTOPが、上場の経緯や成長戦略を語る
2007/12/24
三柴 元 代表取締役社長 《みしば・げん》 |
1944年生まれ。東北大学卒業後、69年丸善石油(現コスモ石油)入社。日本コンピューター・サービスセンター(現情報技術開発)を経て86年ラックを設立、社長に就任。 03年ラック会長に就任、07年ラックホールディングス社長に就任。現在に至る。埼玉県出身。 |
ラックホールディングス(ジャスダック・ヘラクレス3857) ▽本社=東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター11F ▽電話=03-5537-1400 ▽URL=http://www.lachd.co.jp/ ▽設立=2007年10月1日 ▽資本金=10億円 ▽社員数=1252名(2007年10月末現在、連結) ▽事業内容=純粋持株会社(システムインテグレーションサービス事業、セキュリティソリューションサービス事業を行う傘下事業会社の経営管理) ▽業績=売上高223億1900万円、経常利益17億5200万円(2008年3月期見通し、連結) |